最近は至るところで無線LANの電波が飛んでおり、多くの企業でも無線LANが導入されています。
便利な無線LANですが、電波という目に見えないものだけに、トラブルが起きた場合の調査はなかなか大変です。
私も過去何度も無線LANのトラブルに遭遇して格闘しましたが、その中でも最も大変だったトラブルを紹介します。
事象
それまで問題無く使えていた無線LANがある時期を境にブチブチと切れるようになりました。現場部門からも度々無線LANが切れると問い合わせが来だしました。
無線LAN機器が標準機能として備えているフロア上の電波強度がわかるツールを使っても満遍なく電波は飛んでおり、ぱっと見る限り問題は無さそうでした。
無線LAN機器を調達したベンダーにも調査を依頼したのですが、さっぱり原因がわからず。問題無さそうではあるものの、電波強度を調整したり、使用するチャンネルを変えたりしましたが、一向に改善せず。。。
現場部門の業務が無線LANに依存しているため、無線LANの不具合は現場部門の作業効率に直結します。
そのような事情があったため、一旦他の業務をストップし、最優先で無線LANの調査をすることにしました。
無線LAN機器に状況を定点観測できる機能が無かったので、アナログですが定期的に無線LANの状況をキャプチャしてみました。
しばらくキャプチャを続けていると、あることに気付きました。
無線LANのアクセスポイントに割り当たっているチャンネルが、あるタイミングで勝手に変わっており、その時に無線LANが繋がりにくい状態になっていました。そしてそれが1日の中で複数回発生していました。
チャンネルの割り当てが変わることは通常使っていてほとんど無いはずですが、なぜこのようなことが起きているのでしょうか。
原因と解決方法
答えは「DFS」でした。
「DFS」とは「Dynamic Frequency Selection」の略称です。
無線LANで使う特定のチャンネルは気象レーダー等も使っています。それらの発するレーダー波を無線LANアクセスポイントが検知した場合、別のチャンネルに切り替える必要があり、その機能が「DFS」です。あるタイミングを境に無線LANアクセスポイントにはDFSの搭載が法的に義務付けられました。
そして厄介なのは、DFSが発生すると、チャンネルが切り替わるだけでなく、切り替わるタイミングで1分間アクセスポイントのチャンネルチェックが行われ、その間はアクセスポイントとしては機能しなくなります。(詳細はこちらの記事がわかりやすいです!)
ですので、結果的に「気象レーダーからの電波を検知」→「DFS発生」→「アクセスポイントのチャンネルが切り替わる&1分間機能停止」→「クライアントPCは無線LANの接続が切れ、他のアクセスポイントに接続しようとする」→「他のアクセスポイントに負荷が集中」→「無線LANが不安定」という一連の流れが発生していました。
「え?気象レーダーって近くにいるのかって?」
はい、その時の職場は空港に近いところであり、色々調べたところ、無線LANが不安定になりだした頃に空港に気象レーダーが設置されていたようです。
原因がわかったところで、ではどのように対応したのか。
元凶となっている気象レーダーを止めることはできないので(当たり前)、DFSを停止しようとしましたが、これは法律で義務付けられているものですので停止できません。
結論としては、全ての無線LANアクセスポイントのチャンネル割り当てを、DFS対象外のチャンネルにすることで事態を収束させました。
無線LANの5GHz帯にはいくつかの周波数帯があり、W52(36ch〜48ch)、W53(52ch〜64ch)、W56(100ch〜144ch)の3種類です。そして全てのチャンネル帯がDFS対象ではなく、W52のみDFS対象外となります。
ですので、全ての無線LANアクセスポイントをW52の周波数帯に切り替えることでDFSが発生しなくなり、無線LANは安定するようになりました。
しかし、この解決方法には心残りの点があり、本来5GHz帯の3タイプの周波数帯を満遍なく使うことでより高速な無線LAN環境ができたかもしれませんが、それができなかったことです。最新の機材であればDFSに対して、よりスマートに振る舞ってくれるものもあるようですが、今回使っていた機材ではそのような機能はありませんでした。。。
まとめ
というわけで、無線LANがブチブチ切れる原因は「空港の気象レーダー」でした。もし無線LANがブチブチ切れるという方は参考にしていただければと思います!